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US ナヅキ:★エンペルト♂ トキノ:★ジャローダ♂
『まだ何も失くしてなかった頃の話』
ナヅキの左目は元々なかったわけではなく、悪かったわけでもない。至って健康体だった。
トキノもオッドアイではなく双眼共に綺麗な紅色であったし、何も欠けていなかった。

原因となったのは、ナヅキが王族血を引いているが故のことだった。
後継者争いから逃れるべく国から逃亡していた彼は、他の後継者を支持する者たちから追われていた。
追い詰められた時、偶然通りがかったトキノがナヅキを助けたのが二人の出会いだった。
トキノはナヅキが只者じゃないことも、関わると碌な目に合わない可能性も考えていた。
それでもナヅキを街はずれの自宅へと連れ帰り、休んでいけばいいと提案して世話を焼く。
この時点でナヅキはトキノに懐いてるし、恩を感じてる。また、裏のない関係に感動していた。
ナヅキは国王である父とは国を離れて以降、連絡は(どこで追手に聞かれるか分からないため)取れず。
一緒に逃亡した母を目の前で殺害されて以降は、一人で敵意に晒されながら隠れるように生きていた。
そのためナヅキにとってトキノは初めての友達であり恩人。しかし、トキノにその自覚はない。
トキノの自宅で過ごす内に、ナヅキは安息を覚えると同時に不安を抱えるようになっていった。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかない、巻き込むわけにはいかない。そう考えるようになる。
しかし、トキノはそれを分かっていたとでもいう様に出て行こうとするナヅキを玄関で待ち伏せていた。
「オレも連れてってよ、邪魔にはならないからさ」
そう言って笑ったトキノに、ナヅキが嬉しさから笑みを浮かべたのは言わずとも分かることだろう。

その後、何度か襲撃されるも撃退を繰り返していた。
普段からの鍛錬と、襲撃の回数を重ねるにつれて二人の連携も個々の能力も向上していった。
しかし、数の暴力には勝てない。ナヅキとトキノの存在が危険だと判断されたのか。
二人に対し大人数で攻めてこられ、かつてないほどに苦戦していた。
ナヅキが背後から斬られようとしているのが見えたトキノは、ナヅキを庇う様にして突き飛ばした。
結果、トキノは左目をざっくりと斬られてしまう。ナヅキの息が止まった。
激痛により響く絶叫、一人仕留めたと言っても過言ではない状況に笑う追手。
何もかもが許せなかった、この状況を引き起こした自分の身の上すら恨んだ。
その後のことはナヅキも正確にすべてを記憶できていない。
怒りのまま大剣を振るいすべての敵を斬り伏せ、トキノを抱えて医者へと急いだからだ。
正確なのは、最後に立っていたのは自分だけという事実がそこにあったことくらいで。

この一件でトキノが左目を失くしたことを、不慮の事故というには悪意を向けられすぎていた。
大人数を相手にしたことや出血量を考えれば彼も自分も生きているだけでも奇跡だったが、心は晴れなかった。
重症であるトキノの姿、医者に告げられた「視力を回復するすべはない」という言葉。
その現実に、ナヅキは責任を感じざるを得なかった。本来なら、そんな傷を負うことはなかったと。
絶望するわけにはいかないと方法を模索しては、回復の見込みはない。どうしようもないと理解させられる。
一週間経ってもトキノは目覚めない、時間が経てば経つほどナヅキは気に病んで暗くなっていった。
そんな中、街で出会った魔術師―――リーベに問いかけられた。
「何かあったのですか」
聞かれたナヅキは耐え切れず自身の状況と思いを吐き出す、彼はもう限界だった。
一生抱えなければならない傷を負わせてしまった罪悪感、彼を護れなかった無力感。
眠り続ける彼に何もできない自分はいったい何なのか……ナヅキは、自責の念に潰されそうになっていた。
そんな様子のナヅキに、リーベは一言問いかける。
「貴方は魔法を信じますか」
それはリーベにとっての大切な言葉、魔術師として活動する際の前口上。
ナヅキは突然の言葉に驚くが、何かを察した様子で口を開いた。
「それが僕の望むものであるのなら―――いくらでも信じましょう」
魔法を、そして貴方自身を。
その言葉に、リーベはまるで嬉しそうな表情で笑った。


US トキノ:★ジャローダ♂ ナヅキ:★エンペルト♂
『お互いに痕が残ってしまった話』
自身の目のこと。曖昧な記憶のこと。これらを疑問に思いこそすれ、その事実を知らないでいる。
気にならない訳じゃない。知ろうとしたことは、そのきっかけは多く存在していた。
敵が至近距離で武器を振り下ろそうとする瞬間、身体が竦んで動けなくなるのは何故か。
ナヅキは自分を前に出したがらないのは、魔術師と知り合いなのはいつからなのか。
そして、こちらの顔をじっと見つめては何とも言えない表情をするのは何故なのか。
きっと彼はすべて知っているのだろう、聞いても誤魔化されてしまうし口を割ってはくれない。
仕舞には、こちらが悪いことをしているような気分になってしまうのだから困ってしまう。
自分のこれは所謂『トラウマ』というやつなのだろうか。身体は、心はそれを覚えているというのか。
そしてナヅキも、それを言いたくないほど傷ついたのだろうか。
ならば、ならば、オレはきっと、それを暴くべきではないのだろう。
例え、最期まで何も知れないままなのだとしても―――それに平穏を乱すほどの価値があるとは思えない。

ナヅキは左目を失くしたことと心の傷を負い、自己犠牲をいとわなくなった
トキノは肉体・精神の両方に無自覚のトラウマを抱え、記憶も失くされている
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